ヤクルト二軍監督・高津臣吾「『見せ練』はやめてほしい」
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若手には、とにかくのびのびプレーしてほしい。それが二軍監督としての僕の願いだ。思い切りプレーすることが一軍に上がる近道だと、身体に叩き込んでほしい。

 

そのことを僕は、2018年の1月31日、二軍の西都(さいと)キャンプ(宮崎県)が始まる前日にミーティングで選手たちに話した。

 

それに加え、もうひとつ重要なことを伝えたかった。僕が話したのは、「見せ練」をやめてほしいということだった。

 

“見せ練”というのは、野球界の符丁で「監督やコーチにアピールするために練習すること」を指す。見せ練をする選手は、いつの時代にもいる。ただ、僕は見せ練が大嫌いなので、こんなことを話した。

 

「基本的に練習は自分でやってほしい。全体練習は1時間で終わります。それ以外のところは自分で考えて練習してもらいたい。とにかく見せ練はなし。監督が見てる、コーチが見てるから、打撃練習でもうひと箱打っておこうとか、もう少し走っておこうとか、絶対にやめてほしい。意味ないから」

 

この話を、僕はミーティングのいちばん最初に話すことで強調しておきたかった。

 

「俺、見ないから。若い子も、ベテランも、自分がやるべきことをやったら、すぐに帰って身体を休めてもらった方がいいから。それに、俺も帰りたいからね。そのことを肝に銘じてキャンプで過ごしてほしいと思います」

 

僕は、必要なことを自分で考え、コーチを巻き込む練習を選手たちにしてほしかった。日本のプロ野球の場合、コーチが「ちょっと打とうか」とか、「俺、ノック打ってやるから」というコーチの“上から目線練習”が多い。困ったことに、選手たちも声がかかるのを待っている節がある。どうやら、コーチから「自分は期待されている」という気持ちになるらしい。

 

違うだろ、と思う。そうではなく、自分でバッティング・マシンをセットして、「コーチ、ちょっと見てもらえますか」と、大人を巻き込んでいくような選手の出現を僕は期待していた。

 

実は、2018年からはヤクルトに最高のお手本がいた。青木宣親(のりちか)である。青木ほどの立場になれば、誰からも指示されることはない。青木はひとりで黙々と自分に必要なメニューをこなしていく。

 

とにかく打ちたい、走りたい。青木の原点はそこにあり、その姿勢を学んでほしいと思っていた。「青木さんがやってるんだから、俺も」と自然に思うようになれば、最高である。それは絶対に力になる。

 

反対に、「監督がいるから、もう少しクラブハウスに残っていよう」というのは、僕からすれば最悪で、早く帰って自分の時間を作ってほしいと思ってしまう。

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二軍監督の仕事

二軍監督の仕事育てるためなら負けてもいい

高津臣吾(たかつしんご)

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