akane
2018/12/21
akane
2018/12/21
30代のころからずっと、中国古典、東洋思想の勉強をやり続けました。
32、33歳のころから、だいたい朝は5時に起きて、2時間は中国古典の勉強をし、7時になったら朝食を食べて会社に行くという日課でした。それをやらないと、自分の将来はないんじゃないかと思っていましたから、苦痛でも何でもありませんでした。
ずっとそれを続けたおかげで、中国古典の主要なものはだいたい全部読めました。それが良かった。ただひたすら本を読むだけだった。でもそこに何か力がある。それがなかったら、「中国古典でいこう」と踏み切る気にはならなかったでしょう。
「あれだけ読んできたから、大丈夫じゃないか」という思いが支えになりました。勉強のテーマが中国古典だったというのもよかった。語学や技術関連だったら、そうはいかなかったと思う。やっていることが人格・教養にまともに取り組むものだったでしょう。そこが本当に良かった。ありがたいことです。
では、そもそもどうやって中国古典を勉強したのか?
この勉強法はどのような分野や職種にも通用します。私はこれまでこの方法で、弁護士や税理士、会計士を誕生させていますから、誰にとっても役に立つベストな勉強法じゃないかと思います。
まずは、勉強したい分野、身につけたい能力に関する参考図書を調べて入手します。それぞれの分野でのベストのテキストをまず探すのです。
次に、その参考図書が何ページあるのかを調べます。たとえば、『貞観政要』という本を例にとると、212ページですね。1日1ページ、しっかり読んで頭に入れていく。212日で完璧に頭に入ります。テキストが365ページだったら1年ですね。700ページだったら2年、900ページだったら3年です。だから「三年かければ絶対弁護士になれる」と言う。「その代わり、1日1ページだよ。絶対守ってよ」と強く言います。
そうすると、不思議なことに、だいたい半年ちょっと過ぎたぐらいに電話がかかってくるのです。一人残らずそうでした。
「先生、ちょっとご相談が」「何の相談?」「例のあの資格を取る勉強の相談なのですが」「ああ、もういやになったの? 確かに、ちょうどいやになるころだよね」と言うと、「先生、逆なんです。1日1ページと強く言われていたのですが、2ページやってはいけませんか」と言うのです。
「1ページじゃつらくなっちゃって、2ページやらせてもらいたい」と誰もが言うんですよ。
そのときにコツがあるのです。「あ、それは駄目。それは駄目なんだよ」と、断ることです。「それは駄目だよ。1日1ページをもっと徹底してやったほうがいい」と1回突き放す。その上で、もう1回言ってきたら本物です。
もう一度、「もう苦しくなっちゃって、どうしても2ページやらせてもらいたいのですが」と言ってきたら、「わかった、じゃあオッケーするよ。その代わり、2ページ以上やったらダメだよ」と言う。
そうすると、もう半年ぐらい経って、「先生、お願いがあるんですけど……。3ページではいけないでしょうか」と言ってきます。
こうして、最初は10年計画を立てるのだけど、みんな10年なんてかからない。どんどん前倒しになっていって、だいたい3年や5年で目標を達成します。
そもそも私自身の勉強法がそうだったのですが、ほかの人のようすを見ていても間違いない。1日1ページに制限するのがコツです。勉強しはじめは、誰だってやる気があるから、パーっと進んで行きたくなる。でもそれをやると、だいたい3カ月で駄目になる。
もっとも、「1日1ページ」といっても、ただ目を通すだけじゃ駄目ですよ。その1ページを全部頭に入れるということです。漢文であれば、何度も何度もそのページを読んで、「いったいこれはどういう意味なんだろう?」と考えながら、その1ページの隅から隅まで精通する。その積み重ねがすごく大切なのです。
私の書斎にはずらりと中国古典の原書が並んでいますが、私はこの方法でそのすべてを、1ページずつしっかり読んで身につけたのです。これをやっていれば、必ず専門家になれるという確信がありました。
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以上、『ぶれない軸をつくる東洋思想の力』(光文社新書)より、一部改変してお届けしました。
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