akane
2019/03/22
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2019/03/22
1980年代は、日本の製造業の国際競争力が向上し、それに対する世界的な関心が高まっていた時期でした。そしてちょうどその頃、米国の産業競争力の回復を目的として、マサチューセッツ工科大学(MIT)を中心として、産業生産性調査委員会が組織されることになります。
その委員会の調査報告書『Made In America』では、日本の強い産業競争力の背景にあるいくつかの要因を挙げています。そして、NC(Numerical Control、数値制御)工作機械産業についても一定のスペースを割いてその特徴を記述しています。
報告書はまず、NC工作機械産業の戦略的重要性について次のように述べています。
NCおよびNC工作機械は、自動車やエレクトロニクス、機械工業などに対して少
量・多品種かつジャストインタイムで納入している業者に、フレキシブルなオート
メーション化をもたらした。
このようなNC装置の設計と製造を主導したのが、ファナックでした。
日本の工作機械メーカーの多くは、NC装置の開発をファナックに完全に任せて、自らは工作機械それ自体の革新に注力することができたのです。つまり日本の場合、ファナックと工作機械メーカーとの間で分業が行われたということです。
一方、米国の場合は、日本のような分業体制ではなく、工作機械メーカーが自社でNC装置を開発しました。今から振り返ると、この草創期の開発形態の違いこそが、大きな違いをもたらすことになったのです。
しかし、黎明期は、まだそのような先のことまで見通すことは誰もできませんでした。
さて、日米の開発形態の違いについて、報告書は次のように述べています。
日本はNC工作機械のNCの設計と生産をファナック1社に絞った。この為、規模
の経済的メリットが得られただけでなく、アメリカの工作機械ユーザを悩ませた互
換性のなさという問題も回避できたのである。工作機械メーカーは自社でNC装置
を開発する重荷から解放され、ファナックがエレクトロニクス分野にその全力を集
中した為、ファナックと工作機械メーカーとの直接の競合も回避された。
『日本のものづくりを支えた ファナックとインテルの戦略』(光文社新書)を刊行した東北大学大学院の柴田友厚教授によると、柴田氏の調査では、日本がNC装置の開発を意図的にファナック1社に絞ったという事実は存在しないといいます。産業用ロボットなど、メカトロニクス製品の製造を行うメーカーで知られる安川電機もNC装置の開発をしていたからです。より正確にいえば、ファナックが結果として主導するかたちになり、ファナックのNC装置が大きなシェアを占めたのではないかと柴田氏は述べています。そしてその結果、日本の工作機械メーカーは、たしかに、規模の経済のメリットを享受することができ、互換性も維持することができました。
上の報告書にある「工作機械ユーザー」は、工作機械を使用して自社製品を作る自動車メーカーや精密機器メーカーなどを指しています。こうした工作機械ユーザーは、自社の加工条件に従ってNCプログラムを作成し、それを使ってNC工作機械を動かしています。したがって工作機械ユーザーにとっては、一度作成したNCプログラムを他の機械でもできるだけ使用したいという要望は当然のように出てくるでしょう。
しかし、NC装置メーカーが違えば、NCプログラムの言語仕様や操作性が異なるために、他のNC工作機械で使えない可能性も出てきます。
これが、互換性の問題です。
日本の場合、たとえ工作機械が違っても、付加されるNC装置の多くはファナック製であったために、互換性の問題は顕在化しなかったのです。
他方、米国の場合、工作機械メーカーがそれぞれ独自のNC装置を作るために、工作機械ユーザーは互換性の欠如という問題に直面していたのです。
それが、強力なNC工作機械産業を発展させるのに大きな障害になった、と報告書は指摘しています。
さらにファナックの技術戦略について、調査報告は次のように報告しています。
アメリカの制御機器メーカーとは異なり、ファナックは早くから先端的な半導体技
術を採用し、コストに見合った設計を行って標準品を低コストで生産した。
ここでいう「先端的な半導体技術」とは、半導体技術を使った記憶素子である半導体メモリやインテルのMPUを指します。これらの先端技術をファナックは積極的に取り入れたのに対して、米国のメーカーはそうではなかったと指摘しています。
さらに報告書は、標準化を積極的に図ったことでコストを下げることができたという、ファナックの製品戦略の特徴を明らかにしています。
つまり、米国の産業生産性調査委員会では、産業競争力における工作機械産業の重要性と、その中で果たしたファナックの役割について、明確に認識していたことがわかるのです。
※以上、『日本のものづくりを支えた ファナックとインテルの戦略』(柴田友厚著、光文社新書)から抜粋し、一部改変してお届けしました。
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