2019/10/31
小説宝石
『紅蓮館の殺人』講談社
阿津川辰海/著
『紅蓮館の殺人』は、タイムリミットのある物語。山火事に遭遇した高校生二人が、文豪の館に逃げこむ。だが、救助を待つ間に館に住む娘が吊り天井で圧死する。からくりが仕掛けられた館での死は、事故か殺人か。
山火事到達まで三十五時間。真相解明か脱出か、人々の意見は割れる。嘘に敏感で探偵の自覚を持つ高校生が、事件を推理する。一方、過去の経験から探偵であることをやめた人物は、推理より現実に目をむけろという。正しさに関する考え方の違う探偵と元探偵のせめぎあいが、ミステリとしての展開の面白さにつながっている。
『紅蓮館の殺人』講談社
阿津川辰海/著