東 えりかが読む『お庭番デイズ』学生寮が舞台の傑作青春小説

小説宝石 

『お庭番デイズ 逢沢学園女子寮日記』講談社
有沢佳映/著

 

都内にある中高一貫教育の共学私立学校、逢沢学園には自宅通学生の他に、学園敷地内にある男子寮と女子寮から通う生徒がいる。本書は校舎の玄関まで徒歩二分の女子寮が舞台だ。寮生はまだまだこどもから抜け切れない十三歳の一年生から大人一歩手前、十八歳の六年生まで。授業中以外は四階建てのこの寮で共同生活を営んでいる。一年生から三年生までは同い年三人で一部屋、四年生以上はふたりで一部屋があてがわれる。

 

一〇一号室の戸田明日海(通称アス)、藤枝侑名、宮本恭緒は一年生。最初は小学生気分が抜けなかったが、半年近く経つと、すっかり寮生活に馴染み楽しんでいる。朝は六時半に起床、掃除を終えると食堂で全員一緒に朝ご飯を食べる。大急ぎで洗面とトイレを済ませれば、あとは学校へ一目散。行きたくないなんて言っている暇はない。

 

この女子寮には「ピープル・ヘルプ・ザ・ピープル」というモットーのもと、寮生は学園内のトラブル解決に取り組み、人助けをするという約束事がある。その情報収集を行う任務が「お庭番(にわばん)」だ。先輩たちの卒業によって一〇一号室の三人がお庭番に任命された。最初は嫌がっていたアスたちだが、次第に真剣に取り組むようになっていった。人助けといっても大人から見れば思春期にありがちな淡い恋やら喧嘩やら。でも彼女たちは真剣に考え、解決へ導く。

 

登場人物が七十人以上(幽霊含む)なのに物語が進むうちにきちんとキャラクターが立ちあがっていく。凄惨な事件は一つも起こらないのに寮生活はワクワクドキドキの連続だ。彼女たちの悩みに感情移入してついほろり。

 

学生寮を舞台にした青春小説の傑作だ。

 

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『お庭番デイズ 逢沢学園女子寮日記』講談社
有沢佳映/著

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-syosetsuhouseki-

伝統のミステリーをはじめ、現代小説、時代小説、さらには官能小説まで、さまざまなジャンルの小説やエッセイをお届けしています。「本がすき。」のコーナーでは光文社の新刊を中心に、インタビュー、エッセイ、書評などを掲載。読書ガイドとしてもぜひお読みください。(※一部書評記事を、当サイトでも特別掲載いたします)

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