akane
2018/03/27
akane
2018/03/27
昨年、乳がんを発症しました。初発でステージⅣ。毎年、マンモグラフィの検査を受けていたのに、すでに肺にも転移していました。「どうして?」と理不尽な思いに囚われ、なかなか自分の状況を受け入れることができません。「死」への恐怖も感じています。
手術、抗がん剤、放射線・・・・・・治療はまだまだ続きます。健康な人を見てはうらやむ自分、思うように動けない自分が情けなく、暗澹とした気持ちを抱えたまま日々を過ごしています。
これから私はどうなってしまうのか、どんな思いで生きていけばいいのか、アドバイスをお願いします。ちなみに、まさよさんには私の未来が見えますか?
あなたの胸には、いくつもの不安が渦巻いていることでしょう。すごくつらいですよね。悔しいし、苦しいですよね。そしてとてもこわい思いを抱えていらっしゃることでしょう、
でも自分の病状を受け入れられないとか、健康な人を見ると妬んでしまうとか、そんなことは当たり前。自分を情けなく思わなくてもいいのです。
仏教で「人間はこの世で、生老病死という4つの苦悩を避けることができない」とされているように、病気に苦しんだり、死の影に怯えたりするのは、誰もがいつかは経験すること。あなたにはそれがいま降りかかっているのだ、というふうに受け止めてください。そう考えたからといって、病気や死への恐怖が消えることはないかもしれませんが、誰を恨んでも、妬んでもいいんです。
それで少しでもあなたの心がラクになるのでしたら、たくさん恨んでください。それがいまは、あなたの心が自動的にバランスを取っているのだとそう思います。
手術の前の不安や術後の痛み、抗がん剤・放射線治療による副作用の苦しさつらさ、もしかして死ぬかもしれないと思う恐怖、終わりの見えない治療に対するジレンマ、そして完治への希望、どんなときにどんな感情がわき上がってきたかを、しっかり覚えておいてくださいね。
そしていつか病気を克服できたとき、あるいは病状が落ち着いたときに、同じ苦しみ・不安を持つ人の力になってほしいのです。その人の苦しみや不安に寄り添いながら、「大丈夫、私も同じ気持ちだった。同じ痛みを知っている」という言葉とともに、自分の経験したことをすべて話して、寄り添ってあげてください。それが、これからのあなたの人生で果たすことのできるすばらしい使命だと、私は思います。ぜひこの使命を胸に生きていってほしいと願っています。
もうひとつ、ここに書いてよいのか迷いましたが死についても少し触れておきましょう。変な言い方ですが、死が怖いのは生きているからこそ、です。現実には、死は「一瞬」です。一瞬ですから、恐怖など感じている暇はありません。でもその一瞬に、ワーッと膨大な量の記憶を見ます。この世で自分が経験したことが、早送りで再生される感じ。ただ、それは「思い出す作業」ではなく、「記憶を解放していく作業」です。そうして解放された記憶は、すべての人の魂が持っている記憶とひとつに溶け合うのです。そこは魂の故郷のようなもの。人間はみんな、そこから生まれて、そこへ帰っていく。魂は固有のものでありながら、ひとつなんですよ。
病気の苦しみ、死への恐怖を体験することで、
人はとても重要な使命を与えられます。
同じ悩みを持つ人に手を差し伸べてあげる、
そんなあなたにしかできないやさしさが育まれるのです。
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