BW_machida
2020/07/27
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2020/07/27
記憶と記録を作ったドクターK・松井裕樹
この夏に現れた新しいスター選手といえば、やはり松井裕樹だろう。
2年生ながら神奈川県予選では、準々決勝でセンバツにも出場した横浜高校の柳裕也に投げ勝ち、準決勝の平塚学園と決勝の桐蔭学園を下して甲子園出場を決めた。
そして、甲子園初戦の今治西戦では得意のスライダーを中心に組み立て、大会史上最多となる10者連続奪三振と1試合22奪三振を記録し、鮮烈なデビューを飾った。
常総学院戦でも勢いは止まらず、19奪三振を記録して合計41奪三振。これまで坂東英二が記録していた2試合計での最多奪三振記録を更新した。
センバツベスト8の愛工大名電の濱田達郎を攻略した浦添商との戦いでも、対策された中で12奪三振を記録し、ベスト8に進出した。
準々決勝で相まみえたのは光星学院。疲労感も限界に近かった中で、1回はピンチになったものの、2回から5回は完璧に近い投球で奪三振を量産し、無安打無失点に抑える。
田村龍弘・北條史也と2011年夏と2012年春にチームを準優勝に導いた屈指の強打者がいても、松井の攻略は至難の技だった。
ただ、実質一人でマウンドを守り続けてきた松井の身体は限界に近づいており、光星学院打線も松井の実力を踏まえて工夫をし、打順が回るごとに適応してきていることが目に見て分かった。その結果、終盤の8回に要注意していた田村・北條に連続タイムリーを浴び、松井は力尽きた。
2010年代の高校野球において、2年生ながらも大会通じてここまで打者を圧倒できたのは、間違いなく松井ぐらいのものだった。この三振を奪う能力はプロ入り後にも活かされることになる。
この世代2トップ、春夏同一カードの決勝
この年は大阪桐蔭対光星学院という、春夏同一カードの決勝となった。
両校ともに水準以上の投手が二枚いて、打撃陣も分厚く、勝ち上がるには十分な選手層だった。
大阪桐蔭は、春と同様に藤浪晋太郎、澤田圭佑、城間竜兵、金沢湧紀が盤石であり、トップクラスの戦力だった。
しかし、予選では両校ともに危なげなく勝ち上がってきたわけではない。
光星学院は、予選初戦の三沢戦から1点差の接戦であり、3回戦はライバルの青森山田と当たり、点差がついた試合は4回戦のみだった。
大阪桐蔭も、予選決勝までは順調に勝ち上がったが、決勝の履正社戦は6回まで10対1と圧勝ムードの中で藤浪が履正社打線につかまり、終盤までもつれる展開となった。両校ともに予選では苦戦を強いられながらも甲子園出場を決めたのである。
しかし、甲子園の本大会では理想的な勝ち上がり方を見せる。
大阪桐蔭は初戦を危なげなく制し、続く済済黌との試合では藤浪ではなく澤田を先発させ、好投手大竹耕太郎を攻略するなど投手運用も理想的な形で勝利した。さらに、藤浪も大会が進むごとに調子を上げていき、秋季大会で敗れた準々決勝の天理戦は1失点完投勝利、準決勝の明徳義塾戦では完封勝利をあげるなど、完璧なコンディションで決勝に進んだ。
対する光星学院は、田村・北條を中心に打力で勝ち上がり、準々決勝では桐光学園の松井を攻略。準決勝の東海大甲府戦では田村・北條がアベック弾を放つなど、こちらもいい状態で決勝を迎えた。
そして決勝。藤浪×森のバッテリー対田村・北條のいる光星学院打線という構図だったが、春からさらに成長した藤浪の奪三振ショーが繰り広げられた。この試合にピークを持ってきたかのように田村・北條を圧倒する完璧なピッチングで14奪三振を記録し、文句なしの春夏連覇を決めた。
藤浪はプロ入り後に高卒1年目で二桁勝利を記録したが、この時の完成度の高さを見れば当然だ。それだけのピッチングを披露していた。
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