• おとなの発達障害

    診断・治療・支援の最前線

    小野和哉 , 林寧哲 , 柏淳 , 本田秀夫 , 松岡孝裕 , 横井英樹 , 鈴木慶太 , 高山恵子/著  岩波明/監修

ryomiyagi

2020/08/20

ADHD((注意欠如・多動性障害)、ASD(自閉スペクトラム障害)、ADHDとASDの併存、発達障害と愛着障害との関連、精神障害などの二次障害、就職・仕事などなど、臨床医・支援者が、最新の知見に基づき皆さんの困りごとに答えます。

 

成人期発達障害には、探索すべき未知の課題が多いのですが、中でも重要なのが「診断の困難」と「確立した治療法がないこと」です。そして診断を困難にしている課題として、以下の4点が挙げられます。
1併存する障害が多様。
2小児期の客観的症状データを取得することが困難。
3患者の主観的認識により、症状にバイアスがかかりやすい(たとえば、患者自身が自分はADHDではないかと思い込むことによって、症状の現れ方がそれらしいものになる)。
4バイオマーカー(客観的に測定できる生物学的指標)がない。

臨床現場から見ると、小児期に診断されるADHDの多くは、ASDが併存していたり、そのほかの精神障害が併存していたりすることで、認知機能や運動機能などの機能水準が低くなることが多いという印象があります。小児期にADHDと診断されても改善する群においては、ASDの併存が少なく、知的レベルが高く、全般的に機能水準が高い印象があります。
成人期にADHDと初めて診断される群は、社会適応水準が高く、知的レベルが高く、障害が顕在化するのは職務内容の変化など、適応を損なう環境変化に伴ってのことが多いという印象です。

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