akane
2019/06/06
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2019/06/06
ふだん、食事の際や休憩時には何を飲むでしょうか。
その種類によっても、健康の具合は違ってきます。
日本各地を市町村ごとに細かくわけて長寿地域を探した研究では、緑茶を多く飲む地域に長寿者が多いことがわかっています。とくに、静岡県掛川市は長寿の地域で、一人あたりの医療費も日本でもっとも少なかったそうです。
東北大学の栗山進一教授らの調査によれば、緑茶を一日五杯以上飲むグループは一杯未満のグループと比べ、男性で一二パーセント、女性で二三パーセントの割合で、全死因の死亡リスクが低下していました。疾患別で調べると、心臓や血管などの循環器疾患で強い関連がみられました。男性で二二パーセント、女性で三一パーセントも低下したのです。
また、緑茶には、がん抑制効果も期待できます。緑茶はがん細胞にどのように作用するのでしょうか。まずはがん発生のメカニズムから説明したいと思います。
がん細胞は、新しい細胞が古い細胞と入れ替わる新陳代謝の際に生じます。一日に約二パーセントの細胞が新しく生まれ変わっているのですが、これは細胞にとって大変な作業です。核のなかにある約三〇億文字分もの遺伝情報(百科事典二〇巻分)を一字も間違えないようコピーしながら、細胞分裂を行っていくからです。
がん細胞はこのコピーミスから生じます。その原因をイニシエーター(発生要因)といい、活性酸素や化学物質、ウイルス、放射線などいろいろな因子があります。これらがDNAで眠っているがん遺伝子を目覚めさせます。すると次に、プロモーター(発がん促進物質)が細胞を変化させ、それが分裂してがん細胞になります。がん細胞が異常に増殖し、腫瘍になったものががんです。プロモーターにはウイルスや脂肪、塩分などがなります。
しかし、通常は免疫システムによって、がん細胞は修復されたり消されたりして、大きく育ちません。イニシエーターやプロモーターの影響が大きかったり、免疫力が低下していたりすると、がん細胞が増殖してしまうのです。
ですから、がんを防ぐには、がん細胞の発育段階で増殖させる因子をとり除き、免疫を強化できればよいのです。緑茶には、その因子を除く作用があるとわかっています。
静岡県立大学の冨田勲名誉教授は、イニシエーターの影響を抑える効果と、プロモーターの影響を抑える効果にわけ、緑茶の種類ごとにがん抑制効果を調べました。
結果、イニシエーターの影響を抑える効果がもっとも高かったのは粉茶でした。一方、プロモーターを抑える効果が高かったのは、番茶です。その効果はいずれも群を抜いて高い結果でした。粉茶も番茶もいずれもお手頃価格のお茶です。葉を丸ごと粉にした粉茶と、遅れて伸びた茶葉を原料とする番茶は、有効成分の含有量が多いのでしょう。
反対に、高級茶である玉露や煎茶は、がん抑制効果はどちらも低いことがわかりました。
では、緑茶のどんな成分に、がんを抑える作用があるのでしょうか。それは、カテキンというフィトケミカルです。カテキンには、強力な抗酸化作用と突然変異抑制作用があることが、多くの研究によって明らかにされています。カテキンは緑茶の渋みの成分です。よって、渋みが強い緑茶ほど、がんを抑える効果が高くなるということです。
なお、カテキンが細胞に吸収されるには、緑茶との食べあわせも大事とわかってきました。ビタミンAを多く含む食品と一緒にとると、カテキンの細胞内の吸収は格段によくなります。ビタミンAにはレチノールとカロテノイドがあります。レチノールはレバーや卵、カロテノイドはシソやモロヘイヤ、パセリ、ホウレン草、ニラ、高菜漬け、ニンジン、カボチャなどの緑黄色野菜に豊富です。たとえば「レバニラ+緑茶」「ホウレン草と卵の炒め物+緑茶」「高菜漬け+緑茶」などの組みあわせが、がん予防になるということです。
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