ryomiyagi
2019/10/29
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2019/10/29
がん、心・血管疾患、生活習慣病、感染症、精神疾患など、多くの病気との関係が認められている栄養素“ビタミンD”。しかし、現代人のほとんどが欠乏症であるという研究結果が発表され、これが現代病の蔓延につながっていると言われています。ビタミンDとは、一体どのような効果を持っているのでしょうか。
※本稿は、古川健司『ビタミンDとケトン食 最強のがん治療』(光文社新書)の一部を再編集したものです。
ビタミンDはD2~D7の6種類に分けることができます。ただし、D4~D7は活性化が低く、食物にもほとんど含まれていません。
そのため、私たちが体内で主に活用するのは、活性化の高い2つのビタミンD。すなわち、ビタミンD2(エルゴカルシフェロール)とビタミンD3(コレカルシフェロール)になります。
このうち、ビタミンD3は食物から摂取できる他、紫外線によって皮膚でも合成されます。
この皮膚で合成されるビタミンD3が、食物由来のビタミンD2、D3よりも圧倒的に多いという事実は、紫外線をあまり浴びなくなった現代人に、がんやアレルギー、感染症などの疾病が広がっていることの大きな要因として考えられるのです。
実は近年になって、ビタミンDはホルモンに似た性質を有し、ホルモンの分泌を調整したり、免疫機能を整えたりする働きがあることがわかってきました。
ホルモンの働きとは、神経系や内分泌系、免疫系などが密接な連携を持つことで、絶えず変化する外部環境に適応する生体能力を維持することです。
ビタミンDがホルモンの一種と考えられるようになったのは、人体のほとんどの上皮細胞にビタミンDの受容体があることがわかったからです。細胞膜上や細胞内に存在する「受容体」は、特定の物質などから情報を得て、組織機能に変化をもたらすタンパク質の一種です。
このビタミンDの受容体は、私たちの腎臓や小腸などの臓器だけでなく、骨や脳細胞、心筋、血管、免疫細胞、神経細胞など、全身の多くの細胞に分布しています。
このことが、生命活動の根幹を成す栄養素として、ビタミンDへの注目を一気に高めました。
実際、最近の研究によって、ビタミンDの欠乏が、以下のような病気と大きく関係していることが明らかになっています。
がん、心・血管疾患(不整脈、心筋梗塞、虚血性疾患、動脈硬化、大動脈瘤など)。生活習慣病(2型糖尿病、高血圧、脂質異常症など)。自己免疫疾患(関節リウマチ、アトピーや花粉症などのアレルギー、1型糖尿病、甲状腺機能障害など)。感染症(インフルエンザ、ノロウイルス感染症、赤痢、肺炎、破傷風など)。精神疾患(うつ病など)……云々。
これは、ビタミンDの補充が現代病の多くを改善・予防する一助となることを、明確に示しています。
では、ビタミンDは、これらの現代病の数々にいかに作用するのでしょうか。次に、その仕組みと生理作用を説明したいと思います。
ビタミンDの主な生理作用として、これまで伝えられてきた機能には、以下の3つがあります。
(1) カルシウムやマグネシウム、リンなどの腸管での吸収を促進する。
(2) 腎臓からカルシウムが失われることを抑制し、副甲状腺ホルモンを介して血中のカルシウム濃度を維持する。
(3) カルシウムやマグネシウムの吸収を助け、骨を正常に形成する。
したがって、このビタミンDが不足した場合、カルシウムが十分に吸収されず、血中のカルシウム濃度が低下します。そうなると、血中のカルシウムを補おうとして、副甲状腺ホルモンが全身の骨のカルシウムを溶解させ、血中へと送り込もうとします。
これが骨を脆くして、骨粗しょう症や軟骨化症、くる病などを発症させます。ビタミンDにはこれらの骨疾患を予防する効果が、早くから認められてきたのです。
しかし、ビタミンDにはこれだけに留まらない、大きな働きがあることがわかってきました。それは、血圧上昇ホルモンの分泌調整(高血圧の予防)や免疫担当細胞の調整であり、細胞の「分化誘導」と呼ばれるものです。
活性化したビタミンDは、腎臓の細胞から分泌されるレニンというタンパク分解酵素の分泌を抑制してくれます。レニンには血圧を上げる働きがあるため、ビタミンDの補充によって、その上昇に歯止めがかかるのです。
分化誘導とは、ある細胞組織が正常な細胞へと分化したり、別の正常細胞に生まれ変わったりするのを誘導する働きを意味します。広い意味では、アポトーシス(細胞死)も分化誘導の一つです。ビタミンDは、正常細胞おいても、がん細胞においても、分化誘導を行い、がんの発生を予防しているのです。
ここでは、がんや自己免疫疾患、感染症との絡みで、ビタミンDと免疫担当細胞との関係について説明することにします。
免疫機能とは、外部から異物や抗原が体内に侵入してきた際、それを見分けて撃退する生理システムのことを指します。
このなかで、外部からの異物や抗原に免疫機能が過剰に反応して、生体に害をもたらす症状を「アレルギー」と呼びます。
一方、免疫系に異常が生じることで、免疫担当細胞が生体の一部を敵と見なして攻撃する疾患を自己免疫疾患と呼びます。
前記したように、ビタミンDの受容体は、こうした免疫担当細胞にも存在することが明らかになりました。その結果、ビタミンDがいかに免疫機能を左右するのかの研究も各国で進められるようになっています。
そこから明らかになってきたのが、主にマクロファージ、好中球、NK(ナチュラルキラー)細胞といった「自然免疫」(生まれつき備わっている免疫系)と呼ばれる原始的な免疫系を、ビタミンDが強化するという研究結果でした。
さらに、免疫系の異常な反応を抑える「免疫抑制」も、ビタミンDの力で正常に機能することがわかり始めています。
このことは、ビタミンDの欠乏症が、自己免疫系の疾患や炎症性疾患の引き金になることを明確に示しています。
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