2018/10/04
でんすけのかいぬし イラストレーター
『方丈記』光文社古典新訳文庫
鴨長明/著 蜂飼耳/訳
POPを描くために方丈記を読んで、昔も大きな地震や竜巻でたくさんの人が苦労したんだなぁと思っていたら、まさにここに書いてあるようなことが現実世界で次から次へと起こり怖くなってしまった。
地震や台風で被災されたみなさまに心よりお見舞い申し上げます。
一日でも早く日常の生活に戻れるよう、お祈りしております。
***
『方丈記』の前半は日本最古の災害ルポ。
1177年から約10年の間に、大火や竜巻や遷都による町の混乱や大飢饉や大地震が立て続けにあって、長明はそれを目の当たりにしていた。ひとつのところに住んでいたいけど、それが叶わない――立派な家を建てたり富に拘ったりしてもどうせなくなってしまうならしかたないと鴨長明は思った。TVのある今なら誰でもこんな光景を知っているし、共感もするかもしれない。
そういうものに加え、才人なのに運がなく勝てなかった出世競争。俗世を離れて出家するも、用事があって街に出ればやっぱり人の目も気になってしまう。
この、人の目が気になってしまう感じ、よくわかる。
そういうものを切り離してしまいたいからこそ、方丈記を書くことで「人は人、自分は自分」と区切りをつけたかったんじゃないかしら。
あらゆることに関し、世の中が生きにくく、自分の身と住居についても頼りなく、虚しいということは、ここまで述べてきたとおりだ。(33ページ)
方丈記が書かれてから800年も経つのに生きにくいのは変わらないな、と思った。
地震も水害も竜巻も信じられないほど起こっている。
30代半ばを過ぎただけで職を探すのも難しくなり、給料が安すぎるわりに手は抜けないし、スマホやケータイが普及したせいで、プライベートの時間にも仕事が食い込んでくる人だっている。
SNSでは自分への評価は簡単にわかるし、画面の向こうの知らない人との顔の見えないやりとりはストレスだ。
(長明が今の時代に生きていたら、きっと興味ないフリしてエゴサーチして、心無いクソリプを見つけてヘコんだりするのだろうなぁ)
私も定期的に気持ちをリセットできるような静かで小さな空間が欲しい。
……棺桶以外で。
***
さて、鴨長明と言えば小さい家に住んでいた人、というイメージがある人も多いのではないかしら?
方丈記の“方丈”は約3メートル四方の部屋のことだそうだ。
だいたい4畳半くらい。
そこで、想像の方丈の庵に入ってみた。
〈135ページ「方丈の庵」想像図/京都市左京区河合神社に復元された方丈を参考にした〉
ちっっっさ!
せっっっま!
でも秘密基地みたいで心地よい狭さ。
動かなくても必要な物が手に取れるぞ!(そこ?)
ここで鴨長明は過ごしたんだなぁ。
よく見ると琵琶や琴も置いてあるし、すのこの縁側で日向ぼっこしながら歌を詠んだりしたのかもしれない。
住めば都とはいうけれど、どうだろう?
小さな家にずーっと独りで住んで、自分なら何を想うだろう……。
『方丈記』光文社古典新訳文庫
鴨長明/著 蜂飼耳/訳