akane
2018/12/07
akane
2018/12/07
Genre: Rock, Country Blues
Beggars Banquet – The Rolling Stones (1968) Decca, UK
(RS 58 / NME 94) 443 + 407 = 850
Tracks:
M1: Sympathy for the Devil, M2: No Expectations, M3: Dear Doctor, M4: Parachute Woman, M5: Jigsaw Puzzle, M6: Street Fighting Man, M7: Prodigal Son, M8: Stray Cat Blues, M9: Factory Girl, M10: Salt of the Earth
彼らの長いキャリアのなかでも、「黄金時代」と言えばじつはひとつしかない。それが始まった時期がここだ。名プロデューサー、ジミー・ミラーと組んだザ・ローリング・ストーンズは、初顔合わせとなったシングル「ジャンピン・ジャック・フラッシュ」(68年)が起死回生の大ヒットとなる。同じ時期に制作されたのが、イギリスでは7作目のスタジオ・アルバムとなるこの1枚だ。
逆に言うと、この時期の直前のストーンズは、かなり危険な状態にあった。67年に発表した前作アルバム、邦題を「サタニック・マジェスティーズ」とする1枚は、折からのサイケデリック・ブームに飲み込まれた愚作だとして、大いに叩かれた(「シーズ・ア・レインボウ」など、のちの人気曲も入っていたのだが)。ブルースを基盤としていたはずのバンドが本質を見失った、と揶揄された。「絶対に超えられない」ライバルであるビートルズの跡を追っているだけではないか、とも。
そんな世評を、まず前述のシングルがふっ飛ばした(だから「回生」だった)。アルバムはもっとふっ飛ばした。「悪魔を憐れむ歌」との邦題で有名なM1は、アフリカン・リズムのコンガとうなるベース(キース・リチャーズが弾いた)、そして「悪魔が自己紹介している」という設定の歌詞が不穏なナンバーだ。この曲のレコーディング風景はフレンチ・ヌーヴェル・ヴァーグの旗手、ジャン=リュック・ゴダール監督が撮影、ほぼ同時期に世界を震撼させたパリ五月革命を連想させる「革命的」映像とカットアップされて、『ワン・プラス・ワン』と題された映画となった。
そのせいか、路上の革命に参加できないバンドマンを歌ったはずのM6も、この時期まさにデモ隊の行進曲のように愛された。突如として、ストーンズは「反体制派」があこがれる、不良ロッカーの親玉のような立場となる。相次ぐドラッグ問題での政府や官憲との対立も、支持者にとっては好感度アップの材料となった。
一方、本作はストーンズがルーツに回帰した、という意味も大きい。土くさいカントリー・ブルースへの傾倒がこの時期の特徴で、M2、M3、M7が聴きものだ。
本作の仕上がりを前に、ミラーとバンド・メンバーは、お互い顔を見合わせてほくそ笑んだことだろう。ストーンズの「その後の長い長い未来」の原資となる音楽的アイデンティティは、ほぼこの1枚によって確立されたのだから。
次回は36位。乞うご期待!
※凡例:
●タイトル表記は、アルバム名、アーティスト名の順。和文の括弧内は、オリジナル盤の発表年、レーベル名、レーベルの所在国を記している。
●アルバムや曲名については、英文の片仮名起こしを原則とする。とくによく知られている邦題がある場合は、本文中ではそれを優先的に記載する。
●「Genre」欄には、収録曲の傾向に近しいサブジャンル名を列記した。
●スコア欄について。「RS」=〈ローリング・ストーン〉のリストでの順位、「NME」は〈NME〉のリストでの順位。そこから計算されたスコアが「pt」であらわされている。
●収録曲一覧は、特記なき場合はすべて、原則的にオリジナル盤の曲目を記載している。
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