akane
2019/02/26
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2019/02/26
『1分でも長生きする健康術』(大津秀一・著)は医師が提唱する“今日から・誰にでも・簡単に”できる、科学的に証明された「食事」×「運動法」をまとめた一冊だ。
著者はベストセラー『死ぬときに後悔すること25』などを代表作に持つ、現役医師で作家の大津秀一先生。大津先生は緩和医療医としてこれまで2000人以上の看取りの場に立ち会い、「後悔しない最期には、後悔のない健康法が必要だ」と痛感し、本書の執筆に至ったという。
同書で「日本人に特別な健康法は不要」と明言している大津先生に、その理由と根拠を解説してもらおう。
インターネット上の健康・医療にまつわる記事(いわゆるまとめサイト)の信ぴょう性などが問題視された「WELQ」問題などでは、公開された記事が医師監修ではないことが指摘されました。確かに、医師など専門家の監修のない、健康・医療系の記事はどこまで信用できるか不安になりますよね?
それでは医師監修ならば安心なのでしょうか?
実は、そうでもないのです。
現在の医療分野は高度に複雑化し、また情報の更新も非常に速いです。
基本的に、専門家以外は非専門領域の最新のことはわからないものです。
同じ科(内科や外科など)の中でも細かい専門領域がある、ということは知っておくのがよいでしょう。
例えば消化器内科と言っても、胃や大腸などの管の臓器の専門家もいれば、肝胆膵という消化管ではない臓器の専門家もいますし、管の臓器でも炎症性腸疾患という病気の専門家がいたり、がんの抗がん剤治療が専門の医師がいたりなどし、同じ消化器内科の管の臓器の専門家でも、それぞれの最新治療に精通しているとは限りません。
また「医学博士」という称号も、専門的な研究に対して与えられるものであり、医学一般に対して詳しいことを保証していないことも重要です。
……このように書くと、「じゃあ専門的な分野に関しての医師の発言なら、信頼できるだろう」と、思いますよね?
実は、そうとも言い入れないのです。
たとえば、私の専門分野は緩和ケアですから、私が緩和ケアに詳しいのは当然ですが、私が「○○という薬剤は、がんの痛みに効く」と話した時に、それは科学的根拠が強いでしょうか?
もちろんそう話す時は、正解から大きく外れてはいないと思いますが、実はこのような専門家の意見は、「科学的根拠」の中では最低レベルです。
医師の意見、発言は、科学的に言うとそれほど強い根拠であるとはみなされないのです。
それはなぜでしょうか?
答えを言ってしまいますと、研究・論文の裏付けがない証言にそれほど科学的根拠がないのは、極論すれば「体験談でしかない」からです。
例えば、私がAという薬剤を患者さん数人に処方して、患者さんの痛みが結構良くなったとします。私の中では「この薬は効くな」という感覚が生じます。
すると、患者さんにこの薬剤を勧める時に、「この薬は効きますよ」と自身の実感をもとに、時には他の患者さんの事例も挙げてお伝えするかもしれません。
その時私と患者さんの関係が良ければ、『この先生が勧めてくれる薬なら効きそうだ』と感じるでしょう。
それなので、飲んでみると、他よりも「効いているようだ」という感覚が生じます(プラセボ効果が生じています)。
次回の診察時に患者さんに尋ねると、「効いていますね」と答えてくれますから、処方側の私にも「この薬は効く」という実感が高まります。
上記の例のように、医師も自分自身の体験からは逃れられません。
その薬の効果が実は大したことがなくても、このようなことは普通に起こるのです。
医療系の情報に関する医師の発言に限らず、ある食品やサプリ等を摂取した「個人の経験」や、ある運動法や健康法などを実際に試した方たちによる「体験談」、あるいはその他の分野での「専門家の経験による意見」なども、あくまで「個人の体験談でしかない」話であり、残念ながら?科学的に言えば、根拠は強くないのです。
ネット上には様々な医療、健康に関する情報があります。
そういった中で「医師監修」とあると、なんだか信用できそうな気もしますが……。実際には必ずしも信頼できるものとは言えません。
この事を頭の片隅に置いていただけると、怪しげな情報からご自身を守る助けになるかと思います。
(この記事は『1分でも長生きする健康術』大津秀一著 を基に作成しました)
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