akane
2019/07/26
akane
2019/07/26
非常に多くの人が、安易に薬を飲んでいる。
例えば、頭が痛くなったら、原因はわからずとも、とりあえず鎮痛薬を飲んでしまう。そのうち痛みを感じなくなれば、そのままいつもの生活を送り、いつもの食事を摂ってしまう。
また、病院に行っても、どんどん薬が処方される。もちろん、病院では原因を究明しようとするが、本当の原因はわからず、医師の経験や推測で薬が選択されることも珍しくない。
もしそれで症状が良くなれば、果たして薬が効いたのか、時間が解決したのかわからないまま、いつもの生活に戻ってしまう。もちろん、根本の原因はわからないままだ。
このように、体に何らかの不調や症状を感じたとき、薬に頼る人も少なくないだろう。
薬を使用するということは、人間の体にとってどんな意味があるのだろうか。
薬は、人体に本来から備わっている代謝のメカニズムに働く。そのメカニズムは決して不必要なものではない。人間の体にとって重要なものである。
その代謝のメカニズムを阻害したり、弱めたり、強めたりするのが薬である。
不調になった組織の代謝だけに作用すればいいのだが、薬はそんなにピンポイントでは効かない。体全体に効果を及ぼしてしまうのだ。
そうすると、不調な部分は良くなることがあっても、その他の体の部分では、薬の影響で逆に代謝のメカニズムが狂ってしまうこともある。それが副作用だ。
つまり、薬を使用するということの意味は、体の多くの正常な代謝を犠牲にして、不調な部分の代謝や異常な反応を改善するものである。
だから、基本的には、薬の長期使用というのはあり得ない。
不調だった部分が良くなっても、長く続ければ、その他の多くの部分が薬の犠牲になり、不調になってしまうからである。
そう考えると、生活習慣病などを薬で改善することは、体に大きな負担を与えることになる。
そしてまた、ほとんどの薬には、根本的な治療効果はなく、症状を抑えるだけの対症療法の効果しかない。
これを考えると余計に、長期にわたり薬を飲むことが問題だとわかるだろう。
体の悪い部分を根本的に治さないまま、症状だけを抑えていれば、薬を飲んでいる間にも、その悪い状態は進行してしまうからである。
「一生の病気だから、薬をずっと飲んで、うまく付き合っていくしかない」などと医師から言われたことがある人もいるかもしれない。
しかし、これは本来おかしな話である。
もちろん、治すことのできない病気もあるので、全てに当てはまる話ではないが、多くの病気には原因があり、それを改善しなければ、病気は進行し、それを改善すれば、薬は必要なくなる。
現在、合法的に体に取り込むことができるもので、体に大きな害を与える可能性が高いものが二つある。
一つはタバコである。そしてもう一つが糖質である。
もちろんどちらも体に必須のものではなく、その摂取により依存性をもたらす。
だからなかなか止められない。
しかも、糖質に関しては、国が摂取エネルギーの60%もの割合で毎日摂ることを推奨しているので、多くの人は、糖質は必須のもので、健康的な栄養素であると勘違いしている。
生活習慣を変えることの中で、最も大きなことは、食事を変えることである。食事を変えれば、多くの病気は逆転可能である。
運動も禁煙も大事だが、最も大事なことは、日々の糖質過剰摂取を止めることである。
また、薬をいくつも併用することの危険性を考えたことがあるだろうか?
それは医師や薬剤師が考えることかもしれないが、実は、いくつもの薬を併用した場合、どのような有害なことが起きるか、誰も知らないのである。
2種類の限られた薬の相互作用は確認されているものもある。
しかし、3種類以上となると、全く未知の世界になる。数えきれないほどの薬が存在するので、その全ての相互作用を確かめることは無理な話だ。
だから、いくつもの薬が処方された場合、安心して飲める薬などはない。
一部、研究などでわかっている危険性もある。
例えば、痛み止めとしてよく使われている非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)は、副作用として胃などの上部消化管出血を起こす。何も薬を飲まない人と比較すると、NSAIDsでは4・3倍、上部消化管出血を起こしやすい。
同じように、血液をサラサラにする薬であるアスピリンも、2・4倍、上部消化管出血を起こしやすい。さらに抗うつ薬の一つであるSSRIも、1・7倍、上部消化管出血を起こしやすい。
ではこの3種類全てを飲んでいる場合ではどれほどであろうか?
なんと28倍も上部消化管出血を起こしやすいのである。
(Dall,M. et al. An Association Between Selective Serotonin Reuptake Inhibitor Use and Serious Upper Gastrointestinal Bleeding. Clin Gastroenterol Hepatol. 2009,Dec;7(12):1314-21.)
この3種類の薬を飲むケースは、糖質過剰症候群では十分考えられる。
糖質過剰症候群では関節や腰の痛みは珍しくなく、痛み止めを飲み、動脈硬化も進んで脳梗塞になってアスピリンを飲み、同時にうつ状態になって抗うつ薬を飲んでいるようなケースである。
おそらくこのような人は、さらに多くの薬を飲んでいるはずであり、もっと危険な状態かもしれない。
薬を使用するということは、このような危険を背負って生きるということである。
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以上、『「糖質過剰」症候群――あらゆる病に共通する原因』(清水泰行著、光文社新書刊)から抜粋・引用して構成しました。
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