薬を飲みつづけることの危険性――生活習慣病には薬よりもまず、食事の改善
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◆薬を飲むことの意味――代謝のメカニズムに働く

 

非常に多くの人が、安易に薬を飲んでいる。

 

例えば、頭が痛くなったら、原因はわからずとも、とりあえず鎮痛薬を飲んでしまう。そのうち痛みを感じなくなれば、そのままいつもの生活を送り、いつもの食事を摂ってしまう。

 

また、病院に行っても、どんどん薬が処方される。もちろん、病院では原因を究明しようとするが、本当の原因はわからず、医師の経験や推測で薬が選択されることも珍しくない。

 

もしそれで症状が良くなれば、果たして薬が効いたのか、時間が解決したのかわからないまま、いつもの生活に戻ってしまう。もちろん、根本の原因はわからないままだ。

 

このように、体に何らかの不調や症状を感じたとき、薬に頼る人も少なくないだろう。

 

薬を使用するということは、人間の体にとってどんな意味があるのだろうか。

 

薬は、人体に本来から備わっている代謝のメカニズムに働く。そのメカニズムは決して不必要なものではない。人間の体にとって重要なものである。

 

◆多くの「正常な代謝」を犠牲にして、不調な部分を改善する

 

その代謝のメカニズムを阻害したり、弱めたり、強めたりするのが薬である。

 

不調になった組織の代謝だけに作用すればいいのだが、薬はそんなにピンポイントでは効かない。体全体に効果を及ぼしてしまうのだ。

 

そうすると、不調な部分は良くなることがあっても、その他の体の部分では、薬の影響で逆に代謝のメカニズムが狂ってしまうこともある。それが副作用だ。

 

つまり、薬を使用するということの意味は、体の多くの正常な代謝を犠牲にして、不調な部分の代謝や異常な反応を改善するものである。

 

だから、基本的には、薬の長期使用というのはあり得ない。

 

不調だった部分が良くなっても、長く続ければ、その他の多くの部分が薬の犠牲になり、不調になってしまうからである。

 

◆生活習慣病に薬を使うリスク

 

そう考えると、生活習慣病などを薬で改善することは、体に大きな負担を与えることになる。

 

そしてまた、ほとんどの薬には、根本的な治療効果はなく、症状を抑えるだけの対症療法の効果しかない。

 

これを考えると余計に、長期にわたり薬を飲むことが問題だとわかるだろう。

 

体の悪い部分を根本的に治さないまま、症状だけを抑えていれば、薬を飲んでいる間にも、その悪い状態は進行してしまうからである。

 

「一生の病気だから、薬をずっと飲んで、うまく付き合っていくしかない」などと医師から言われたことがある人もいるかもしれない。

 

しかし、これは本来おかしな話である。

 

もちろん、治すことのできない病気もあるので、全てに当てはまる話ではないが、多くの病気には原因があり、それを改善しなければ、病気は進行し、それを改善すれば、薬は必要なくなる。

 

◆まずは食事を変えてみる

 

現在、合法的に体に取り込むことができるもので、体に大きな害を与える可能性が高いものが二つある。

 

一つはタバコである。そしてもう一つが糖質である。

 

もちろんどちらも体に必須のものではなく、その摂取により依存性をもたらす。

 

だからなかなか止められない。

 

しかも、糖質に関しては、国が摂取エネルギーの60%もの割合で毎日摂ることを推奨しているので、多くの人は、糖質は必須のもので、健康的な栄養素であると勘違いしている。

 

生活習慣を変えることの中で、最も大きなことは、食事を変えることである。食事を変えれば、多くの病気は逆転可能である。

 

運動も禁煙も大事だが、最も大事なことは、日々の糖質過剰摂取を止めることである。

 

◆薬の併用の危険性を知る

 

また、薬をいくつも併用することの危険性を考えたことがあるだろうか? 

 

それは医師や薬剤師が考えることかもしれないが、実は、いくつもの薬を併用した場合、どのような有害なことが起きるか、誰も知らないのである。

 

2種類の限られた薬の相互作用は確認されているものもある。

 

しかし、3種類以上となると、全く未知の世界になる。数えきれないほどの薬が存在するので、その全ての相互作用を確かめることは無理な話だ。

 

だから、いくつもの薬が処方された場合、安心して飲める薬などはない。

 

一部、研究などでわかっている危険性もある。

 

例えば、痛み止めとしてよく使われている非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)は、副作用として胃などの上部消化管出血を起こす。何も薬を飲まない人と比較すると、NSAIDsでは4・3倍、上部消化管出血を起こしやすい。

 

同じように、血液をサラサラにする薬であるアスピリンも、2・4倍、上部消化管出血を起こしやすい。さらに抗うつ薬の一つであるSSRIも、1・7倍、上部消化管出血を起こしやすい。

 

ではこの3種類全てを飲んでいる場合ではどれほどであろうか? 

 

なんと28倍も上部消化管出血を起こしやすいのである。

 

(Dall,M. et al. An Association Between Selective Serotonin Reuptake Inhibitor Use and Serious Upper Gastrointestinal Bleeding. Clin Gastroenterol Hepatol. 2009,Dec;7(12):1314-21.)

 

この3種類の薬を飲むケースは、糖質過剰症候群では十分考えられる。

 

糖質過剰症候群では関節や腰の痛みは珍しくなく、痛み止めを飲み、動脈硬化も進んで脳梗塞になってアスピリンを飲み、同時にうつ状態になって抗うつ薬を飲んでいるようなケースである。

 

おそらくこのような人は、さらに多くの薬を飲んでいるはずであり、もっと危険な状態かもしれない。

 

薬を使用するということは、このような危険を背負って生きるということである。

 

…………

 

以上、『「糖質過剰」症候群――あらゆる病に共通する原因』(清水泰行著、光文社新書刊)から抜粋・引用して構成しました。

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この記事の書籍

「糖質過剰」症候群

「糖質過剰」症候群あらゆる病に共通する原因

清水泰行(しみずやすゆき)

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